| 咬合はいろいろな部分に影響を及ぼします。咬合を整えるにはどうしたら良いのでしょうか。
人間の様々な器官、歯はもちろん全ての臓器は互いに無関係ではありません。したがってからだのどこかに不調があれば必ず他の部位にも不都合が現れます。
しかし、歯以外の臓器器官は、多少の怪我や病気であれば自然治癒能力で元通りに治ってしまいます。加齢による変化や大手術を必要とするものを除けば、常に元通りに再生する能力に富んでいると言えるでしょう。
一方、歯はむし歯の項で書いたように微小な部分では常に再生を繰返しているものの、大きなむし歯や抜歯による歯の移動、詰め物冠せ物による歯の形態の変化等々、自然治癒能力の及ばない状況にいとも簡単に陥るのです。
そこで人為的により天然の歯に近づくように治療をしているのですが、人間の身体は微妙なバランスの上に成り立っているので、最適な状態を探し出すのには大変な労力を必要とします。ともかく放置しても元通りになってくれない歯科疾患は、我々の手でなるべく元の状態に出来る限り近づける必要があります。
そこで重要なのは身体は様々な力の要素によってバランスをとっており、咬合のバランスもその一つです。たった一本の歯の位置も口唇や頬と舌との圧力で均衡が保たれ一定の位置に留まりますし、上下の当り具合で移動もする
。一本の歯が移動すれば隣接する歯も移動し、顎位〈咬み合わせる時の、顎の位置〉も移動します。ほんの僅かな変化に対しわれわれの身体はバランスをとろうと色々と変化するのです。
咬合の治療では、できるだけ自然な位置に顎がくるように調整をします。そのためには、実際に悪い部分だけでなく、全体のバランスが取れるように一見関係ない部分の調整もしなくてはなりません。
時々こんなことを言う患者さんがいらっしゃいます。
「右の歯が最近高い感じがして咬むと邪魔になるのですが、この歯を少し削ってもらえませんか?」そこで私は噛み合わせを観察してから、患者さんに「左のこの歯を少し削ってもいいですか?」と聞くと大抵は「邪魔なのは右なのですが」 と怪訝な表情で聞いてきます。
このように説明してから少しだけ邪魔な歯とは反対側の歯を削らせてもらいます。
すると患者さんは「あっ 邪魔な当りが無くなりました!でもなんで高い歯と反対側の歯を削ったのに、こっちが低くなるのですか?」と不思議そうに聞いてきます。
これも力のバランスです。バランスを崩した為に一箇所の歯が強く当っていただけで、その原因は別の歯にあったと考えられます。原因を取らないで、高いと感じる歯を不用意に削ると余計にバランスを崩すのです。そしてまた高くなって削るの繰り返しになってしまいます。
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